私、お母さんになります

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娠検査薬で陽性反応が出た。

私は真っ先になぜか鏡の前に立ち、自分の顔を見た。

「私、お母さんになるんだ」

口に出したら、自分でも理由が分からない涙が流れてきて
頭の中にたくさんの人の顔が浮かんだ。

夫の顔、両親の顔、友人の顔、仕事仲間の顔・・・

今はペタンコのこのお腹の中に、
もう命がひとつ宿っているんだ。

近くの産婦人科へ自転車を漕ぎながら、

「この子が宿ったと分かった日の空が、
 こんなに澄んで輝いていたことは覚えておこう」

そう思った。

妊娠して思うことは、
『妊娠って面白い』ということ。

街を歩けば妊婦さんはたくさんいる。

皆、日に日にお腹を膨らませて、
時が来れば、痛くて大変なお産をしてママになる。

そういうものだと思っていた。

まさかこんな風に、おへそが出てきたり、
プロレスラーみたいに大きなパンツをはいていたなんて!

など、ここには到底書けないような
あんな変化、こんな変化。
体の不思議、命の神秘、面白い!

それから、望む未来の時間が長くなった。

たとえばある日の夕方、
ベランダに出ると夕日がきれいで
風が気持よくて、
子供の声やカレーの匂いが
どこからかしたりして…

そんな時、
「この子が大人になった時にも
 同じように気持の良い
 平和な夕方がありますように…」
と願う。

自分一人なら世界と関わる時間は、
長くてもあと60年くらいのものだ。

でも、ここに命が芽生えたこの瞬間から
絶対に平和であってほしいと思う未来が
グンと延びた。

そのために節電とか節水とか、
今出来ることがあるならやらなければと…

今まで「どうでもいい」
と思っていたわけではないけれど、
より強く、リアルにそう感じるようになった。

そして何よりも、命の尊さを感じている。

私に赤ちゃんができたことを人に伝えると、
皆、私の方が驚くほどに喜んでくれる。

とりわけ、私が初めて報告をした時の
父の、あの顔を私は一生忘れないことだろう>>>

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食の時、乾杯と同時に

「私、赤ちゃんができました」

と、少し恥ずかしい気持で伝えると、
父の目は真ん丸に開き、背筋がグンと伸びて、
息さえ止まったように驚いた顔をした。

それから次にポロポロと涙を流し、
頭をかきながら、

「そうかぁ・・・
 良かったぁ…良かったなあ」

と何度も言い、背中を丸めた。

私も母も夫も、
予想もしない父の反応に、思わずもらい泣き。

父は私の結婚式でも泣かなかった。

私でさえ、父をこんなに喜ばせたことはない。

こんな風に泣かせたことなどないのに
私のお腹の中の、
たった1ミリの点のような「命」が
強い父を泣かせている。

命であるというだけで、
こんなにも人を喜ばせるんだ。

そうか、命ってこんなにも尊いものなんだと
身に染みて感じた。

それからいろいろな人の祝福を受けながら、
現在妊娠8ヵ月。

夫は優しく「ストレスフリーが何よりの胎教だ」
と言って、私が楽しいと感じることに協力し、
自由にさせてくれる。

夫の両親も、おくるみやママバックを手作りしたり、
私の体調を気遣って、温かい言葉をかけてくれる。

友人たちは皆、私の変化を一緒に楽しみ、
この子の誕生を待ってくれている。

ある時、夫が私に言った
「君の両親に感謝している」と・・・

私が「何で?」と聞くと
私を私に育ててくれたからだと答えた。

嬉しくてまた泣いた。

私の両親が私にしてくれたこと。

夫の両親が夫にしてくれたこと。

同じように同じことを、
私たちがこの子にしてあげることは
できないかもしれない。

けれど一番大切なものは、
もう受け継がれているような気がする。

膨らむお腹の分だけ勇気が凛凛と湧いてくる。

そして、まだ見ぬあなたに伝えたい。

「安心して生まれてきてね。

 皆があなたの誕生を喜び、
 楽しみに待ってるよ。

 ここは愛に溢れた素晴らしい世界だよ」と・・・

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